図書館シリーズ
「傍らに寄り添う暖かい熱」/堂上×郁

 夜半時。そろり、と音を立てぬように堂上は寝台を抜け出した。
 それでも体重でぎしりと軋むスプリングに舌打ちしそうになる。
 振動で目を覚ましやしないだろうか?
 そっと伺えばすやすやといまだ眠りの底にいる郁の寝顔が確認できた。
 ほっと息を吐く。
 一人寝が長かったからか、どうも調子が狂う。
 今までのように乱暴に起き上がれば、きっと彼女を起こしてしまうだろうから。
 疲れきった――どうしてだか、は新婚夫婦だからだと言えば想像に難くないだろう――郁を起床時間でもないのに起こすのは躊躇われた。
 過去に深い関係を結んだ彼女がいなかったわけではないが、こうして毎日当たり前のように隣で眠る存在は郁が初めてだ。
 思わずまじまじと見る。窓から差し込む月明かりで郁の頬が照らされて、どこか御伽噺のように現実感が無かった。
 ふと思いついてカーテンをそっと閉めに行くことにした。
 今は夜中だからいいが、夜明けともなれば朝日で眩しいだろう。
 月明かりに照らし出された郁の姿に見蕩れていた堂上としては、もったいなく感じなかったでもないが――できるなら、ぎりぎりまで寝かせてやりたかった。
 本来なら、こうして起き上がるのも避けたいところだったが、生理現象には勝てず、諦めて体を起こすしかなかった。

 手早く用をすませ、喉を潤した。
 喉が酷く渇く。
 多分、それは本当に喉が渇いているわけではなくて、渇えているのは別の場所だとわかっていたが、わからないふりをする。

 そうだ。本当にほしいのは水ではなくて・・・・・・

 ちらり、と横目でみた郁はまだ寝息を立てていた。
 赤く染まった艶のある唇に目がいく。引き寄せられる。

「これくらいは大丈夫か?」

 起こしたくないのは本当だ。でも、鈍感な眠り姫は気づかないかもしれないから、これくらいは。

 郁の傍らにそっと滑り込みながら、堂上はそっと口付けをする。
 起こしたくないという気持ちと、起きて目を覚ましたらどういう反応をするだろうという好奇心と戦いながら。


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あとがき
堂上×郁。
某絵茶でふと思いついたお題をリクエストしてみたものの、誰も書き手がいそうにないと思い、自分で書いて見ました。
新婚堂郁。
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