間もなく終業という頃だったが、今日は遅くまで講演会のあった為、後片付けがまだ残っていた。
件の講演会は堂上が中心となって会場の警護の指揮をとっていた関係上、自分だけが帰るわけにもいかない。最後まで面倒をみるのが責任者である自分の仕事だった。
さて、もう一働きするか。首を左右に振ればごきごきと音が鳴った。
「あ、堂上!」
小牧に声をかけられたのは、講演会で使った椅子を手際よく折りたたんでまとめていたときのことだった。
「今、少し時間あるかな?」
「なんだ?」
「笠原さんのことでちょっと・・・」
「うちのがどうかしたか?!」
「うちの、ねえ」
くすくすと笑う小牧に、自分の口にした一言を思い返しはっと口を押さえた。
「なんでもない。それより用件を早く言え!笠原がどうした!」
「――うん、堂上の、のことなんだけど」
堂上の、のこと。
意地の悪い小牧の言に眉を吊り上げつつも、堂上は先を促すようにあごを上げた。
「ちょっと今日トラブルがあったようでね。悪いんだけど、後は引き受けるから着替えを持って迎えにいってあげてくれないかな?」
「着替え?!アイツ、何した?」
「笠原さんが何かしたわけじゃないよ。怪我をしたわけでもないから、その辺は安心して。・・・・・・実は、講演会で親子連れが一組いたの覚えてる?」
「ああ、途中泣き出した子供がいたな。それが?」
「うん、慌てて親御さんが子供を連れて会場を一回でたんだけど、その時に笠原さんが講演会の間面倒をみてあげましょうかって言い出してね。親御さんもそうしてくれれば助かる、ということで引き受けたんだけどさ。参ったよ、その子があんまりにも泣き止まなくてね。仕方無しに親御さんから泣いているときに与えてくれ、といって渡されたオレンジジュースを渡したんだ。そうしたらね・・・」
「そうしたら?」
「思いっきりパックを握りつぶしちゃったんだ、その子。それで丁度目の前にいた笠原さんがオレンジジュース被っちゃって。結構派手に」
「・・・・・・で、そのままなんだな?」
「一応、早く洗ったほうがいいってことでね。洗ったみたいなんだけど、着替えがなくて困ってるみたいだから。女子も丁度帰っちゃった後みたいで、代わりに貸せる服もなくてね」
「わかった。後、頼んでいいか?」
「いってらっしゃい。王子様はお姫様の危機を救うものだからね」
「誰が王子だ!」
「堂上、以外にいるの?笠原さんの王子様」
言って、自分で小牧は噴出した。
「〜〜〜〜〜っ言ってくる!じゃあな!」
上戸に入った小牧を置いて、堂上は走り出した。
――全く世話が焼ける奴だ。
「堂上の、によろしくね」
笑いながら背にかけられた小牧の言葉に、
「ああ、うちの、によろしくいっておくさ!」
開き直ったような言葉を返してから。
あとがき
堂上×郁。
某絵茶で119名義でこっそりかいたお話。
誰かが「うちのがどうした」で物書きさんに書いて欲しいといっていた気がしたので、急遽萌えちゃLOG置き場スクリプト設置してかいてみました。